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人口増加に転じた「消滅可能性都市」住民サービスを充実させたみやき町の巧みな戦略

投稿日:2021年1月7日

2008年度から始まったふるさと納税制度の利用が拡大し始めたのは、ワンストップ特例制度などが導入された2015年頃にさかのぼる。その後、過熱する返礼品競争を受けて、2019年6月1日に施行された新制度のもとでは「返礼品は寄附額の3割以下、地場産品に限る」というルールが定められた。そして4市町が「制度の趣旨に反し、著しく多額の寄附を集めた」自治体として除外された。

「除外自治体は、今」のコーナーでは、マスコミ等では報道されていないその4市町の取り組みや想い、現状を紹介する。連載2回目に取り上げるのは、佐賀県みやき町。HISの旅行券やiPadなどの家電製品といった地場産品ではない返礼品を目玉に2017年度には約72億円、18年度には約168億円の寄附を集めた。人口約2万5000人、税収規模20〜30億円の小さな町がそれだけの寄附金を集めて何を実現したかったのか。取り組みを先導した町長に話を聞いた。

競争に乗り遅れるわけにはいかなかった

「われわれのように、小規模で自主財源に乏しい自治体にとって、ふるさと納税は大変ありがたい制度です。寄附金を多く集めている自治体が住民サービスを充実させているのを知り、本町でも取り入れようと思ったのが本格的に取り組み始めたきっかけです」

そう語るのは、2005年よりみやき町長を務める末安伸之。合併前の中原町時代も含めると、町長職は30年近くになるベテランだ。社会福祉法人の常務理事や特別養護老人ホームの副施設長を経て町長になったという異色の経歴を持つ。

 

2016年頃までは地場産品のみを返礼品として扱い、地道にコツコツ寄附金を集めていたみやき町が、HISの旅行券やiPadなどの家電製品を出すようになったのは、加熱する返礼品競争に「乗り遅れるわけにはいかなかった」からだ。

「本当の地場産品(総務省が認める地場産品)と言えるものは、本町にはほとんどありません。町の体験アプリを入れたiPadなどの家電製品は、大手家電量販店に押される地元商店の救済を目的とした工夫の産物でもあったんです。2018年11月から5ヶ月間で集めた寄附金が 50億円を超えた、という理由だけで新制度から除外されたのは正直、想定外でした」

みやき町が寄附金という財源の確保に躍起になった背景には、「背に腹は代えられない。住民サービスを充実させなければならない」という末安町長の切実な思いがある。

 

ふるさと納税で“苦境”を打破

発端は、三町が合併し、みやき町が誕生した2005年にさかのぼる。町長に就任した末安は、財政力に格差がある三町の平準化を図るべく、道路や水路等のインフラ整備や老朽化した中学校の建て替えなどを計画・実行。しかし、道路や水路の整備だけでも60数億円の事業費を要するなど、想定以上にコストがかかり、思うようには進まなかった。

合併特例債(借金)を活用しながら積極的に住民サービスの向上に取り組んだものの、少子高齢化や人口減少に歯止めがかからず、2014年には民間のレポートで「消滅可能性都市」のレッテルを貼られてしまう。そんな苦境で末安町長が頼みとしたのが、ふるさと納税だった。

みやき町から出ていった人たちが戻ってこられる受け皿として、子育て世代向けの一戸建て、マンション150戸を建てたのは2014年から2017年にかけて。間取りや構造、セキュリティがよく、月の家賃は周辺の相場より15,000円程度低い。そんな好条件の住宅(PFI住宅)を整備したことで、転入者が増加。待機児童が出たために、急きょ保育所を増築した。それにともなって、町内に分譲住宅やコンビニができるなど、町は活性化していった。

成功の秘訣は、民間がその資金やノウハウを生かして公共事業を行うPFI(Private Finance Initiative)方式の活用だ。みやき町は全国に先駆けて、定住促進住宅の整備や土地の分譲、住宅建設など、PFIを用いた公民連携のモデルづくりに取り組んできたのである。

「住居整備に関しては、ハウスメーカー、住宅開発メーカーとタッグを組み、用地交渉はすべて町が請け負っています。いくらいいノウハウやアイデアがあり、いい人材がいても、財源がなければ地方創生はできません。原資としてふるさと納税の寄附金を活用したおかげで、私たちは人口増加という成功例を作ることができたんです。一般財源では、暮らしを維持するだけで精一杯ですから」

こうした施策により、2018年、減少の一途をたどっていた人口は22年ぶりに増加に転じた。この背景には、住宅などのハード面だけでなく、小中学校の給食費無償化(2018年度より)、18歳まで原則医療費無償化(2019年度より)など、ソフト面の充実も見逃せない。「隣の市から橋を渡っただけで、1ヶ月4万円生活費が浮く」とあれば、転入者が増えるのも自然な流れだった。

 

ふるさと納税を活用し、住民自治・住民参加を促進

末安町長は、集まった寄附金を活用して住民自治にも取り組んできた。「地区内で話し合って、使い道や配分を決める」仕組みのもと、2019年度には1000万円、2020年度には200万円の交付金を各地区に出したのだ。

まちづくりにおいて、防犯システムやガードレール、水路の整備といった住民の生活課題に直結する部分は費用対効果が低く、限られた財源の中では後回しにせざるを得ない側面がある。そういった住民の身近な要望にスピーディーに応えていくためにも、ふるさと納税は有効だったのだ。

これにより大木除去や放置されている空き家の管理など、各地区の困りごとが解決に向かったのはもちろん、それ以上に喜ばれたのは「自分たちで意思決定できる」住民自治の実現だった。

「参画すれば、喜びを共有できますから。大げさに言えば、人という財産を活用したんです」

 

耕作放棄地の利活用や文化活動に補助金を出したのも「人財活用」の一環である。アイデアしだいで運営費をもらえることもあり、知恵を絞る団体や個人が増えてきたという。

「ふるさと納税制度から除外されたことに対してあまり批判されなかったのは、そうやって住民に還元していたからだと思います。もちろん内心では『除外されなければ恩恵を受けられたのに、なぜ総務省に従わなかったのか』と思っていた人もいるでしょう。そこは事業者説明会でお詫びし、ピンチをチャンスに変える新たな戦略を打ち出していきました」

 

持続可能な関係を築き、まちを未来に受け継いでいく

「除外期間は充電タイム」と捉えていたみやき町では、協力業者の受け皿として、インターネット上に「仮想商店街」を立ち上げ、ふるさと納税の返礼品を出品するなど、前向きな取り組みを進めていた。

「インターネットという販売経路があるとわかったら、自主的に取り組むだろうと考えたんです。事業者の自立を促すことがねらいでした。行政の役割はあくまでも、いかにストーリー性をもたせたり、いい商品に加工したりできるか、といった後方支援ですから」

「皮ごと食べられる無農薬国産バナナ」(通称・神バナナ)や誘致した工場で生産される家電製品など、新たな返礼品が生み出されたのも除外期間中だ。2020年7月に制度復帰したみやき町は、ふるさと納税特設サイトをオープン。返礼品のラインナップは今後も増やしていく予定だが、何でも取り扱うわけではないという。

 

 

「地元の協力業者と競合するような商品開発は避けてきました。『新しい挑戦は大事だけど、地元に貢献してくれたところを脅かすようなことはやってはならない』と担当者にも強く言っています」

あまり目先の利益を追わないように、というのが末安町長のモットーだ。協力業者と持続可能な関係を築いていくことが恒久財源の確保になる。ふるさと納税を原資とした「子々孫々に恩恵をもたらす持続可能なまちづくり」は、始まったばかりだ。 

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