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寄付金の使いみち

「10年後には桃がなくなる?」紀の川市が挑む「桃農家支援プロジェクト」

地域が誇る銘菓やブランド牛、旬の農産物や水産物、店舗や旅行で便利に使用できる電子ポイントなど、ふるさと納税には、バラエティに富んだ返礼品が揃っています。

ふるさと納税の楽しみは、返礼品を選び、受け取ることだけではありません。

縁(ゆかり)のある地方自治体や、お世話になった思い入れのある自治体などへの寄附金の使い道を選ぶことで、自身の寄附金が町や村に与える影響を知ることも一つの醍醐味となるでしょう。

ふるさと納税バイブルでは、返礼品が目的の寄附だけではない選択肢を知ってもらうために、全国の自治体に寄附金の使い道を伺い、その想いを発信していきます。

今回ご紹介するのは、和歌山県紀の川市です。西日本有数の果樹産地として知られるこのまちでは、地域の象徴ともいえる桃を未来へつなぐため、寄附金を活用した新たな挑戦が始まっています。

多彩な果物が栽培される“フルーツ王国”紀の川市。

和歌山県北部、大阪府のすぐ南に位置する紀の川市は、2005年に打田町・粉河町・那賀町・桃山町・貴志川町の5町が合併して誕生しました。

北には和泉山脈、南には紀伊山地が広がり、市の中央には一級河川・紀の川が悠々と流れています。山と川に囲まれたこの地は、肥沃な土壌と温暖な気候に恵まれ、古くから農業が盛んな地域として知られてきました。

特に注目されているのが果物です。紀の川市は「あら川の桃」を筆頭に、いちじく、柿、いちご、キウイフルーツ、はっさくなど多彩な果物が栽培される“フルーツ王国”。生産量・品質ともに日本トップクラスを誇り、四季折々に旬の果物を味わえることから、全国のファンに親しまれています。

なかでも桃は、紀の川市を象徴する存在です。西日本一の生産量を誇る桃は、地域の農家が長年の経験と技術を積み重ねて育ててきたもの。柔らかくジューシーで甘みが強いのが特徴で、品種によっては淡いピンク色の果皮が美しく、贈答品としても人気を集めています。

また、紀の川市には観光面でもユニークな魅力があります。和歌山電鐵貴志川線の終点・貴志駅には、世界的にも有名な「ねこの駅長」が在籍しており、その愛らしい姿を目当てに海外からも多くの観光客が訪れます。果物と観光が結びついたこの地域は、訪れる人に温かな印象を残すまちでもあります。

桃の未来を守る「桃農家支援プロジェクト」

紀の川市が寄附金を活用して取り組んでいるのが、「桃農家支援プロジェクト」です。掲げられたメッセージは、「10年後には桃が無くなるかもしれない」。インパクトのある言葉ですが、その背景には、産地が直面する深刻な課題があります。

紀の川市の桃づくりは長い歴史を持ち、地域の基幹産業として発展してきました。西日本一の生産量を誇るこの地域では、農家が長年の経験と技術を積み重ねながら、ブランド桃としての価値を築き上げてきました。

しかし近年、農家を取り巻く環境は大きく変化しています。気候変動による高温障害や霜被害、害虫の増加、生産資材の価格高騰、さらには担い手不足など、複数の課題が同時に押し寄せています。被害が重なった年には収量や品質が落ち込むこともあり、「このままでは産地の継続が難しい」という声も聞かれるようになりました。

実際、紀の川市にはおよそ850戸の桃農家があるといわれていますが、その多くが高齢化の課題を抱えています。自治体担当者は、その現状をこう語ります。

「農家の高齢化は深刻な問題です。今70歳の農家さんが、10年後には80歳になります。後継者不足もありますし、桃を絶やさないためにも農家支援が必要だという危機感があります」

産地の声から始まった支援プロジェクト

こうした状況を受け、地域のJAわかやま紀の里地域本部から「過去から受け継がれ、多くの人に愛されてきた桃を未来に残したい」という強い声が上がりました。

この声をきっかけに、市・JA・ふるさと納税の中間事業者である株式会社ローカルの3者が連携し、桃農家支援プロジェクトが立ち上がりました。

このプロジェクトの特徴の一つが、ふるさと納税型クラウドファンディングを活用している点です。

紀の川市では返礼品として桃を選ばれる寄附が多く、これまでも桃をきっかけに多くの皆さまから応援をいただいています。しかし、「桃を守るために寄附をしたい」という想いを直接反映できる仕組みはありませんでした。担当者は、その背景を次のように語ります。

「桃の返礼品を選んで寄附してくださる方は多いのですが、これまでは“桃のために使ってほしい”という思いをピンポイントで示せる仕組みがありませんでした。クラウドファンディングという形にすることで、桃農家を応援したい方の気持ちを、より直接的に形にできるのではないかと考えました」

寄附金が支える、桃農家の現場

プロジェクトで集められた寄附金は、桃農家への具体的な支援に活用されます。

主な支援内容は、桃の栽培に欠かせない果実袋の配布や農業資材購入費の補助です。果実袋は桃の品質を守るために必要不可欠な資材ですが、その費用は農家にとって大きな負担となります。こうした資材購入の一部を補助することで、農家の負担を軽減し、安定した栽培環境を整えることが目的です。

寄附募集は昨年11月下旬からスタートし、2月末に終了しました。目標額2,000万円に対し、全国から寄せられた寄附は約2,300万円。目標を大きく上回る支援が集まりました。

寄附金は一度市に集められた後、補助金としてJAに渡され、JAを通じて農家へ資材支援として届けられる仕組みになっています。

現在はJAが果実袋などの資材調達を進め、農家への支援が具体化しています。ただし、桃農家は約850戸あるため、1戸あたりの支援額は決して大きな金額ではありません。

それでも、この取組には金額以上の意味があります。担当者はこう話します。

「桃農家さんにとって一番大きいのは、全国から応援してくれる人がいると実感できることだと思います。寄附という形で応援が“見える”ことで、農家さんの励みになるのではないかと感じています」

桃づくりを未来へつなぐために

紀の川市が目指しているのは、一時的な支援ではありません。 「桃づくりを未来につなぐ持続可能な産地づくり」です。

資材補助による栽培環境の改善に加え、若手農家や後継者の育成、ブランド力の向上、販路拡大などを通じて、産地全体の底上げを図ることを目指しています。

また、クラウドファンディングを通じて寄附者との新たなつながりが生まれたことも、大きな成果の一つです。担当者は次のように語ります。

「単に桃を受け取るだけではなく、“桃の産地を守りたい”という想いで寄附してくださった方が多かったのではないかと思います。桃農家の頑張りや産地の背景まで伝わったことは、とても大きな意味があると感じています」

紀の川市は今後も、気候変動への対応や防除体制の強化、新規就農者の支援などを進めながら、桃産地の持続可能性を高めていく方針です。応援してくれる人々とともに、桃づくりの歴史を次の世代へとつないでいこうとしています。

紀の川市では、寄附金が単なる財源としてではなく、地域の産業と未来を守る力として活用されています。

返礼品を通して味わう果物の背景には、産地を守ろうとする人々の努力と想いがあります。一箱の桃の向こうにある、農家の努力と地域の未来。

その物語に思いを巡らせることも、寄附のもう一つの楽しみ方なのかもしれません。

返礼品

紀の川市のふるさと納税では、地域の魅力を味わえる果物が返礼品として用意されています。

1.あら川の桃

紀の川市を代表するブランド桃。西日本最大級の生産量を誇る「あら川の桃」は、柔らかな果肉とジューシーな甘さが特徴です。産地の温暖な気候と豊かな土壌、そして農家の丁寧な手仕事によって育てられた桃は、毎年多くのファンに愛されています。

2.紀の里の桃

紀の川市の豊かな自然の中で育てられた桃。品種によってさまざまな味わいが楽しめ、家庭用としても人気の返礼品です。フルーツ王国・紀の川市の魅力を気軽に味わえる一品です。

3.紀の川柿

秋になると登場する紀の川市の名産品。しっかりとした甘みと上品な味わいが特徴で、桃と並ぶ人気の果物です。季節ごとに違ったフルーツが楽しめるのも、紀の川市ならではの魅力といえるでしょう。

自治体情報

和歌山県北部に位置する紀の川市は、大阪府に隣接する立地にあり、関西都市圏からのアクセスにも恵まれた地域です。市の中央には紀の川が流れ、周囲には山々が広がる自然豊かな環境の中で、農業を基盤とした地域の暮らしが営まれてきました。

市内には、果樹園や畑が広がるのどかな景観が残り、四季折々の農産物が地域の食文化を支えています。農業とともに歩んできた地域ならではの直売所や農産物の販売所も多く、新鮮な農産物を求めて訪れる人も少なくありません。

また、和歌山電鐵貴志川線の終点・貴志駅は、ねこの駅長で知られる観光スポットとして国内外から注目を集めています。ローカル線の魅力と地域の温かな雰囲気が合わさり、訪れる人々に親しまれています。

自然環境と都市圏への近さをあわせ持つ紀の川市は、地域の産業や文化を大切にしながら、暮らしやすいまちづくりを進めている自治体です。

紀の川市のふるさと納税

和歌山県紀の川市の基礎情報や返礼品をまとめてご覧いただくことができます。

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