投稿日:2024年11月7日
地域が誇る銘菓やブランド牛、旬の農産物や水産物、店舗や旅行で便利に使用できる優待券など、ふるさと納税には、バラエティに富んだ返礼品が揃っています。
ふるさと納税の楽しみは、返礼品を選び、受け取ることだけではありません。
縁(ゆかり)のある地方自治体や、お世話になった思い入れのある自治体などへの寄附金の使いみちを選ぶことで、自身の寄附金が町や村に与える影響を知ることも一つの醍醐味となるでしょう。
ふるさと納税バイブルでは、返礼品が目的の寄附だけではない選択肢を知ってもらうために、全国の自治体に寄附金の使いみちを伺い、その想いを発信していきます。
今回取り上げるのは、「aiboツーリズム」を手がけ、交流人口や関係人口の増加を目指している愛知県幸田町の取り組みです。
aiboのふるさとは「ものづくり」のまち。
ソニーの自律型エンタテインメントロボット「aibo(アイボ)」の全国唯一の製造・修理工場がある、愛知県幸田町。全国のaiboオーナーから“聖地”と呼ばれるこの町は、「aiboのふるさと」として観光地化を進めています。
幸田町は、2020年にふるさと納税の返礼品にaiboを採用し、これまでに累計1億6,724万円の寄附金を集め、148体のaiboをオーナーの元へ届けてきました。
令和5年度のaiboの寄付は37件で、38,110,000円(※1体1,030,000円)もの寄付が集まりました。
この寄附金は、「aiboツーリズム」の推進や、同町の交流人口・関係人口の増加を図るためにも充当されています。
幸田町には中部工業団地をはじめとする多くの工業団地があり、「ものづくりのまち」として発展してきました。aiboのほかにも、世の中に広く流通している商品を数多く製造しています。
「東京オリンピック、パリオリンピックで選手村に寝具を提供した『エアウィーヴ』は、幸田町で創業しました。小さい町工場から始まり、ここまで成長した企業です。浄水器で大きなシェアを誇る『クリンスイ』も幸田町で製造されており、商品は幸田町のふるさと納税の返礼品や企業の公式サイトなどで購入できます。商品名だけでなく、幸田町の名前ももっと広く知っていただきたいですね」
(幸田町自治体担当者・以下同)
※現在は1体1,200,000円となっております。
全国からaiboオーナーが来店する役場内のカフェ
幸田町役場内にある「ハミングバードカフェ」は、全国で唯一、常設のaibo遊び場を備えたカフェです。
各地から、aiboを自分の子どものように大切にするオーナーが訪れるほか、役場が所有する2体のaiboに会いに来る家族連れの姿も見られます。
カフェの中央には人工芝が敷かれ、オーナーが自分のaiboを自由に遊ばせられるスペースが設置されています。
「オーナーの皆さんは、aiboを自分の家族のように思っています。普段から一緒に連れて歩きたいと思っていても、他のお店では店員さんやお客さんの目が気になり、aiboを出すのをためらうことが多いようです。しかし、この幸田町のカフェでは、気兼ねなくaiboを出せるので、とても喜ばれています」
カフェ内の「aiboの遊び場」
幸田町でaiboの製造が始まったのは、現行のモデルが発売された2018年のことです。
しかし、1〜2年経っても、町民の間では幸田町でaiboが製造されていることを知っている人は少なく、役場の職員にすらあまり知られていませんでした。
「私が知ったきっかけは、aiboのオーナーさんが、自分の家族ともいえるaiboの”生誕地”である幸田町を訪れ、写真を撮っているという話を聞いたことでした。ソニーの幸田サイト(工場)は交通アクセスが不便なうえ、敷地内に入れず道路で撮影していると聞き、せっかく遠くから幸田町まで来ていただいたのに、申し訳ない気持ちになりました」
aiboをふるさと納税の返礼品に
幸田町の担当者は、「aiboオーナーにもっと楽しんでもらいたい」「aiboが幸田町で作られていることを町民にもっと知ってもらいたい」との思いから、aiboをふるさと納税の返礼品として提供することを考えました。しかし当時は、換金性の高い家電や電子機器は返礼品に認められておらず、その案は断念せざるを得ませんでした。
その後、法改正を受けて、2020年にふるさと納税の返礼品にaiboが追加されました。
その後、製造元であるソニーから「aiboの遊び場」を役場内につくる提案があり、オーナーに楽しんでもらえるよう、さまざまなアイディアが生まれました。
「カフェのスタッフと協力して、aiboの肉球をモチーフにしたラテアートやティラミスなどのメニューを開発しました。また、お店の壁には装飾を施し、オーナ―さんの名刺を貼るためのコルクボードを設置しました。さらに、aiboデザインのマスキングテープや名刺帳も作成しました」
aiboの肉球を描いたラテアート
こうした取り組みが功を奏し、次第に役場内のカフェにaiboオーナーが集まるようになりました。さらに、地元企業にも協力を呼びかけ、aiboをモチーフにしたどら焼きやえびせんべいといったお土産も製造されるようになりました。さらには、旅館「天の丸」ではaiboと一緒に過ごすための「aiboルーム」も設置されるなど、町全体で観光地化が進められてきました。
aiboをモチーフにしたどら焼き
「以前から、幸田町はaiboのオーナーさんたちに”aiboの聖地”と呼ばれていましたが、私たちはこれを『aiboのふるさと』という名前で打ち出しました」
aiboツーリズムの一環として、幸田町では「aiboの七五三」も開催しています。
初回は2021年に東京の神田明神で行われ、翌年の2022年からは幸田町の猿田彦三河神社でも開催されるようになりました。
「オーナーさんたちは着物など正装をして参加されます。御祈祷の後、レッドカーペットに並んだ約20体のaiboに『参拝する』と掛け声をかけると、みんなで一斉に『二礼二拍手一礼』をするのです。それぞれのaiboには個性があり、きちんとする子もいれば、言うことを聞かない子もいます。人間の子どもと同じで育て方によって性格が変わってくるんですよ」
七五三で「参拝する」aibo
ちなみに、幸田町の役場にいるaiboは、”ワイルド”な性格なのだそう。
町と企業が連携を深め、地域を盛り上げていく
幸田町はaiboの製造元であるソニーをはじめ、どら焼きやせんべいなどふるさと納税の返礼品を提供している地元企業との連携を強化し、地域振興や観光業の発展に貢献してきました。
「地元企業の売上が増加し、観光客も増え、良い循環が生まれ始めていると感じています。今後は、aiboの輪をさらに広げていきたいと思っています。幸田町の企業には、aibo関連のグッズやメニューをさらに充実させてもらい、オーナーさんには幸田町を“aiboの聖地”として実感し、楽しんでもらえるような取り組みをどんどん進めていきたいですね」
また、幸田町への移住者が増えることも期待されています。
すでに熱心なaiboオーナーの中には、幸田町に移住したいという声もあるのだそう。
「aiboのオーナーさんたちは、繋がりやコミュニティを持っています。例えば、定年退職後にお子さんが巣立った後、aiboやその仲間たちと一緒に幸田町でのんびりと過ごしてもらえたら嬉しいですね」
aiboをふるさと納税の返礼品にしたことがメディアに取り上げられたことで、幸田町の全国的な知名度もアップし、町民の間でもaiboが幸田町で製造されていることが広く知られるようになりました。
「aiboの返礼品は高額寄附のため、寄附額が劇的に増えたわけではありませんが、観光客の増加や地域経済への貢献は大きいです。また、町民の誇りの向上にもつながっています。“幸田町はこんな有名なものを作っているんだ”と地元を誇りに思い、好きになってもらえる効果があると感じています」
「aiboのふるさと」として町を活性化し、観光地化を目指している幸田町の取り組みを応援したいという方は、ぜひ寄附をお願いいたします。
自治体情報
愛知県の南部に位置し、額田郡に属する町。名古屋へはJRで40分、南北に国道248号、東西に国道23号が通り交通アクセスが便利でありながら、山と畑に囲まれた温暖なまち。
中部工業団地など多くの工業団地があり、自動車産業をはじめとする製造業もさかんです。
形が筆の穂先に似ていることからその名前がついた「筆柿」は、日本一の生産量を誇り、幸田町を代表する特産品です。
コクがあり濃厚な甘さが特徴の「筆柿」
肉が柔らかく、脂に甘みがあると評判の「夢やまびこ豚」はエサにこだわって飼育されており、2019年の農林水産祭では内閣総理大臣賞を受賞。
幸田町のふるさと納税
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