
投稿日:2025年6月11日
地域が誇る銘菓やブランド牛、旬の農産物や水産物、店舗や旅行で便利に使用できる電子ポイントなど、ふるさと納税には、バラエティに富んだ返礼品が揃っています。
しかし、ふるさと納税の楽しみは、返礼品を選び、受け取ることだけではありません。
縁(ゆかり)のある自治体や、お世話になった思い入れのある自治体などへの寄附金の使いみちを選ぶことで、自身の寄附金が町や村に与える影響を知ることも一つの醍醐味となるでしょう。
ふるさと納税バイブルでは、返礼品が目的の寄附だけではない選択肢を知ってもらうために、全国の自治体に寄附金の使いみちを伺い、その想いを発信していきます。
今回取り上げるのは、クラウドファンディング型のふるさと納税制度を取り入れ、市民のチャレンジを応援している埼玉県北本市の取り組みです。
自然と都会がバランスよく調和した町
北本市は、埼玉県の県央部に位置し、東京都心からのアクセスも良好な地域で、都市機能と豊かな自然が調和した魅力的な町です。駅から少し離れると、田んぼや畑が広がり、農業や自然と触れ合える生活を楽しむことができます。
北本市内には「北本自然観察公園」があり、豊かな自然を身近に感じながら散策や観察が楽しめます。
また、北本市は、県内初となる「森林セラピー基地」に認定され、「森林セラピーロード」も整備されています。森林の中を歩きながら自然の力で心身を癒すこの場所は、地域住民はもちろん、訪れる人々にとっても大切な憩いの場となっています。
さらに、北本市は「シティプロモーション」を積極的に進めており、人口減少や転出の問題に取り組んでいます。かつては「消滅可能性都市」ともいわれた北本市ですが、シティプロモーションの活動が一助となり近年は社会増に転じ、魅力的な地域としての認知度も高まっています。このように、地域の魅力を発信し続けることで、多くの人々が「住んでみたい」と思えるまちづくりが進められています。
寄附金の具体的な使いみちを選べる「クラウドファンディング型ふるさと納税」
北本市では、市民が主導する地域活性化プロジェクトを支援するため、ふるさと納税の仕組みを積極的に活用しています。
市民の「やってみたい!」という思いを後押しするために導入しているのが、クラウドファンディング型のふるさと納税です。
この制度では、地域の課題解決につながる取り組みや公益性のあるプロジェクトを募り、審査により認定されたプロジェクトをポータルサイトに掲載、そのプロジェクトに対して共感した寄附者が寄附を行うことで、プロジェクトを応援できる仕組みになっています。
そのため、プロジェクトを主導する市民や団体、応援する寄附者のどちらもが、地域づくりにより主体的に参画できるきっかけとなり、地域の魅力向上にもつながっています。
「ふるさと納税担当者として、“寄附金の使いみちを具体的に事業レベルまで明らかにして、寄附者の方にお伝えしきれていない”という課題感がありました。その課題を解決するために、クラウドファンディング型ふるさと納税を導入しました。プロジェクト単位で明確に使いみちを示すことで、寄附者自身が寄附先を選び、より納得感を持って寄附してもらえる仕組みにしています」
(北本市自治体関係者・以下同)
北本市はクラウドファンディング型のふるさと納税を活用し、今まで以下のような取り組みを支援してきました。
1. 災害時でも心温まる美味しさを。クッキー屋さんの「防災用クッキー」開発
無添加で見た目も可愛い防災用クッキーを開発し、災害時にも心温まる美味しさを届ける――そんな思いから始まったプロジェクトです。地域の人々に安全で美味しい備蓄食を届けることを目的に発足しました。
このプロジェクトに挑戦したのは、埼玉県北本市にあるクッキー専門店「クッキークル」。店名には、「クッキーを通じて“クルッ”と笑顔がつながってほしい」という願いが込められています。
店主の女性は、東日本大震災をきっかけに「災害時でも美味しく、そして体にやさしいものを届けたい」と強く思うようになりました。そこで、長期保存が可能で美味しさを保てるクッキーの開発を決意。製品化に向けた資金をクラウドファンディングで募りました。
その想いに共感した人々が北本市内外から応援に駆けつけ、多くの支援が集まりました。そして、3年間保存可能な「おともクッキー」の開発に成功。現在、この「おともクッキー」は北本市のふるさと納税でも人気の返礼品となっています。
2. 商店街に集いの場を。「まちの工作室」プロジェクト
商店街の中に、地域住民や観光客が集まる工作室を設け、地域のにぎわいを取り戻そうというのが「まちの工作室」プロジェクトです。地域活性化を目的にスタートしました。
この取り組みのきっかけは、北本団地商店街の閑散化。住民の高齢化や少子化、転出の増加の影響で、商店街は「シャッター通り」と化していました。そんな中、空き店舗を活用したシェアスペースが誕生し、ジャズ喫茶が開店。すると、地元住民だけでなく遠方からも人が訪れるようになり、商店街は徐々に活気を取り戻していきました。
この変化に触発された人々が「私も北本団地で活動したい」と続々と手を挙げ、個人の挑戦が連鎖するかたちで、商店街全体の活性化へとつながっていきます。
さらに地域を盛り上げたいという思いから、3人の女性作家が集結し、シェアアトリエ&ギャラリー「まちの工作室てと」をオープン。ワークショップの開催やギャラリー展示を通じて、「つくる」「見せる」楽しさを共有し、誰もが気軽に立ち寄れる交流の場を提供しています。
3. 地域と障がい者をつなぐ「made in 北本」の薪づくり
地域の造園会社「矢口造園」、市内の福祉事業所「くじら雲」、そしてホームセンター「カインズ」が連携して取り組むプロジェクトでは、北本産の間伐材を活用し、「made in 北本」の薪の製造を目指しました。
北本市では、誰もが安心して働き・学び・暮らせる地域社会の実現を目指しています。このプロジェクトは、地域資源の有効活用や障がい者の雇用創出、そして地域とのつながりづくりを促進する取り組みのひとつです。
「ふるさと納税の寄附者や北本市民の皆さんなど、多くの方がこの取り組みに共感し、応援してくださいました。雇用や地域の賑わいといった目に見える効果もあり、他の自治体から“ぜひ参考にしたい”との声もいただいています」
ふるさと納税返礼品
北本市のふるさと納税の返礼品で人気の品は、クッキークルのクッキーです。
1.3年保存のクッキー「おともクッキー」
ふるさと納税クラウドファンディングのプロジェクトで開発された、無添加クッキー。北本産の小麦など厳選された素材を使用し、長期保存だけでなく美味しさも兼ねそろえています。防災意識を高めつつ、美味しいお菓子を楽しめる、寄附者から高い評価を得ている返礼品です。
2.クッキー缶(9種類入り)
白地に花柄の缶にバタークッキー、オイルクッキーが9種類入っています。雲や花の形のクッキーや色鮮やかなクッキーなど、楽しんで召し上がれる返礼品です。
北本市では、地域の活性化に向けて、さまざまなプロジェクトが進行中です。ふるさと納税を通じて、それらの取り組みを支援する仕組みが整えられており、寄附金は市民の活動に力を与える貴重な資源として活用されています。
また、地域の魅力を広く発信しながら、北本市ならではの特色あるプロジェクトが次々と展開されています。
「地域に貢献したい」「魅力的な取り組みに関わりたい」――そんな想いを持つ方は、ぜひふるさと納税を通じて北本市を応援してみてはいかがでしょうか。
自治体情報
北本市は、埼玉県県央部に位置する人口約6万5千人のまちです。1971年に誕生し2021年に市政50周年を迎えました。美しい里山や雑木林などの豊かな自然にあふれる一方、首都圏へは電車で約1時間でアクセスできる便利な地域です。
北本市には野山の散策やキャンプ、農業体験など常に自然と触れる機会があります。また、新鮮な野菜や果物が年間を通じて直売所やスーパーに並び、市民の食卓を彩っています。
北本市は市民の豊かな暮らしの実現のため、子育て支援に力を注いでおり、子どもの医療費補助や一時預かり事業、児童館・こども図書館も充実しています。
こうした緑の豊かさや暮らしやすさを「&green(アンドグリーン)」というコンセプトに込め、さまざまな事業を展開しています。この取り組みを通じて北本市の魅力を発信するとともに、市民の市への愛着心の醸成も目指しています。
北本市のふるさと納税
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