投稿日:2024年4月26日
地域が誇る銘菓やブランド牛、旬の農産物や水産物、店舗や旅行で便利に使用できる優待券など、ふるさと納税には、バラエティに富んだ返礼品が揃っています。
ふるさと納税の楽しみは、返礼品を選び、受け取ることだけではありません。
縁(ゆかり)のある地方自治体や、お世話になった思い入れのある自治体などへの寄附金の使い道を選ぶことで、自身の寄付金が市町村に与える影響を知ることも一つの醍醐味となるでしょう。
ふるさと納税バイブルでは、返礼品が目的の寄付だけではない選択肢を知ってもらうために、全国の自治体に寄付金の使い道を伺い、その想いを発信していきます。
今回取り上げるのは、「ワインと木曽漆器のまち」として知られる長野県塩尻市の取り組みです。
100年以上の歴史をもつ塩尻ワイン
塩尻市を代表する特産品といえば、何といってもぶどうとワインです。JR塩尻駅の3・4番線ホームには日本で唯一のぶどう棚があり、秋の収穫期には大粒の実がたわわに実り、ホームに降り立った瞬間、甘い香りに包まれます。
ー駅構内のブドウ棚。観光名所としても人気ー
塩尻市でぶどうの栽培が始まったのは1890年。その7年後には、ワインの醸造も始まりました。立役者となったのは、豊島理喜治(とよしまりきじ)氏で、1ヘクタールの原野に26品種、約3000本もの苗を植え、ワイン造りの会社を設立したことが始まりとされています。
ー市内のぶどう畑ー
その後、塩尻市のワインは、世界的なワインコンクール「リュブリアーナ国際ワインコンクール」で大金賞を受賞(『シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1985』(1989年)、『1986』(1990年))。この2年連続の受賞により、世界的なワインの銘醸地として塩尻の名が知られるようになりました。
現在、市内には15社のワイナリーが点在し、全国でも珍しい生徒たちがワインをつくる塩尻志学館高校の存在も際立っています。
「塩尻市では、地域ブランド構築の一環として、このぶどうとワインのPRに寄付金を活用しています。
具体的には、塩尻のワインを多くの人に楽しんでいただくため、5月に塩尻ワイナリーフェスタを開催しています。オリジナルワイングラスを片手に、市内ワイナリーの個性豊かなワインを堪能できるイベントです。2005年に始まり、秋から春に開催時期を変更し、現在にいたるまで続いています」(塩尻市自治体担当者・以下同)
▼「塩尻ワイナリーフェスタ2024」は、2024年5月18日、19日に開催予定です。
https://www.shiojiri-winery-fes.jp/
また、ぶどうの郷づくり推進事業にも寄附金を充当しています。ぶどうの品質向上や果樹振興を目的に、ぶどう棚の新設や維持などにかかる費用を支援する「果樹園整備促進事業補助金」に活用されています。
国指定の伝統工芸「木曽漆器」の振興
ぶどう・ワイン以上に長い歴史を誇るのが、市内の木曽平沢地区を中心産地とする国指定の伝統工芸品「木曽漆器」です。この木曽漆器振興事業にも寄附金が充当されています。
ー木曽漆器ー
木曽漆器の伝統は400年以上に及び、もともとは奈良井宿(中山道の中で最も栄えた宿場町)の白木細工に漆塗りを施すことからはじまったとされています。木曽ひのきをはじめとした豊かな森林資源や漆器に適した湿潤な気候、そして中山道の街道文化とが相まって産業として飛躍的な発展を遂げました。
こうした木曽漆器に触れる機会として、毎年初夏に「木曽漆器祭」を開催し、市内外にその伝統と魅力を伝えています。
木曽漆器祭は、木曽平沢で行われる年に一度の大漆器市です。町並みに約100店舗が店を出し、職人が精魂込めて仕上げた銘品から現代的な創作漆器まで、さまざまな木曽漆器が並びます。破格値の掘り出し物が見つかることもあり、価格交渉も醍醐味のひとつです。
▼秋の木曽漆器祭
https://shikki-shukuba.shiojiri.com/
DX推進で時代の変化にもいち早く対応
塩尻市ではほかにも、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進事業に寄附金が役立てられています。
住民サービスの向上を図り、来庁者が書類を書かずに手続きできる「書かない窓口」のシステムの運用も開始し、デジタル技術で生活の質などを高める変革を進めています。
塩尻市が先進的に取り組んできた地域DXの拠点となるのが、塩尻市振興公社が運営する「core塩尻」です。「最先端の技術を活用し、まちに変革を起こし続ける場所」として設立されました。時代ごとに変化する地域の課題やニーズに対応していくための新たなサービスやアプリケーションの創出に重点を置き、さまざまな取り組みを進めています。
ーcore塩尻ー
例えば、交通DXの領域では、2020年にスタートした「塩尻MaaSプロジェクト」において、暮らしがより便利になる公共交通の実現を目指し、自動運転技術やAI活用型オンデマンドバス「のるーと 塩尻」など、次世代モビリティサービスを活用した実証実験を行ってきました。
ー自動運転見学の様子ー
「自動運転実証では、株式会社ティアフォー等と協業し、レベル4を含んだ自動運転サービスの導入検討と実証走行を進めています。自動運転走行に必要となる高精度三次元地図の作製には、自営型テレワーク推進事業『KADO(カドー)』が携わっており、塩尻の自動運転は世界でも珍しい地産地消モデルです」
「KADO」とは、「働きたい誰もが、働ける機会をつくる」をミッションに掲げ、フルタイムでの就労が難しい人などを対象に、時間にとらわれず働ける就労方法を提案、提供する自営型テレワークの仕組みです。これまで働き方に多くの課題を抱えていた女性たちを中心に、柔軟な働き方を可能にしています。
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地域の伝統を守りながら、時代の変化に合わせて柔軟に対応を変えていく。そんな塩尻市の取り組みを応援したいという方は、ぜひ寄附にご協力をお願いいたします。
自治体情報
長野県のほぼ中央に位置する塩尻市は、主要幹線が交わる交通の要衝。中山道の69ある宿場のうち、ちょうど真ん中の34番目の宿場町であった奈良井宿は、200年前の街並みが今なお残る人気の観光スポットです。南北に約1キロにわたって伸びる宿場町に一歩足を踏み入れれば、ちょっとしたタイムスリップ気分を味わえます。
製造業が基幹産業であり、「ものづくりのまち」としての顔も持っています。代表的な企業としてセイコーエプソンの事業所が塩尻にあり、エプソンのプリンターはここから誕生しました。プリンターはもちろん、塩尻市で製造したSEIKOの時計は、ふるさと納税の返礼品としても人気です。
塩尻市のふるさと納税
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