地域が誇る銘菓やブランド牛、旬の農産物や水産物、店舗や旅行で便利に使用できる優待券など、ふるさと納税には、バラエティに富んだ返礼品が揃っています。
ふるさと納税の楽しみは、返礼品を選び、受け取ることだけではありません。
縁(ゆかり)のある地方自治体や、お世話になった思い入れのある自治体などへの寄付金の使いみちを選ぶことで、自身の寄付金が町や村に与える影響を知ることも一つの醍醐味となるでしょう。
ふるさと納税バイブルでは、返礼品が目的の寄付だけではない選択肢を知ってもらうために、全国の自治体に寄付金の使いみちを伺い、その想いを発信していきます。
今回取り上げるのは、「花と味覚と歴史のまち」北海道厚岸町です。古くから町を代表する味覚として親しまれてきた牡蠣の養殖、CO2削減のための植樹祭など、独自の取り組みが際立っています。
特産品「厚岸牡蠣」の養殖事業を支えるカキ種苗センター
厚岸町では、「保健福祉」「防災対策」「地域産業の振興」「観光振興」「環境対策」「教育振興」と、大きく6つの領域でふるさと納税の寄附金が活用されています。
その中でも、特筆すべき使い道として挙げられるのが、「地域産業の振興」に分類される厚岸牡蠣の養殖事業です。1999年に開所された厚岸町カキ種苗センターでは、牡蠣養殖の生産基盤強化を目的として、シングルシード方式を用いた牡蠣の飼育や餌料の培養などを行っています。
ー厚岸町カキ種苗センターー
「通常、牡蠣はホタテの貝殻に砂利ほどの大きさの稚貝を付着させ、海中に垂らして養殖する方法が一般的です。しかし、この方法ではどうしても牡蠣同士がぶつかり合い、形が悪くなったり、成長を阻害してしまったりする難点がありました。
一方、シングルシード方式というのは、かごに入れた牡蠣の稚貝をそれ単体で育てる方法です。海中の自然な揺れに任せることで、他の牡蠣の影響を受けず、丸みを帯びた形のよい牡蠣ができあがります。シングルシード方式を取り入れている自治体は全国でも珍しく、厚岸町は全国ではじめて導入したまちとなっています」(厚岸町自治体担当者・以下同)
ー牡蠣養殖の様子(シングルシード方式)ー
さらに厚岸町の取り組みが珍しいのは、海と湖を行き来させながら養殖している点です。
「厚岸町は、天然の良港として知られる厚岸湾が深く入り込み、市街地をふたつに分ける橋を境にして厚岸湖と接続しています。この厚岸湖は、山から流れてくる川の淡水と、海からの塩水がまじりあった汽水湖です。こうした珍しい地勢を生かし、定期的に牡蠣を海と湖と行き来させることで、海からのプランクトンと山のミネラルの両方を含んだ、塩気の少ない淡泊な牡蠣に仕上げています。
これにより、牡蠣の成長のタイミングを変えることもできるので、一年を通して生で食べられる牡蠣の提供が可能になります。季節によって味わいが変わるのも面白いところで、プランクトンを多く含む冬場はよりクリーミーな味わいに、産卵期になる夏場は見た目がぷっくりとして食べ応えのある牡蠣になります」
こうした養殖技術を守っていくために、種苗センターでは常に牡蠣の稚貝を育て、養殖方法の研究・改良を重ねています。その施設の光熱水道費や機械の維持費、大学との連携に係る費用などを寄付金で賄っています。
CO2削減のための植樹活動にも注力
厚岸町ではほかにも、寄付者からの関心が最も高いという「環境対策」にも力を入れています。
CO2削減の取り組みの一環として、電気自動車や太陽光発電の整備のほか、毎年春に開催している「町民の森植樹祭」に寄付金が役立てられています。
町内各所の森で行っている植樹祭には、町民や企業などから毎年500人ほどが参加。2023年6月の開催時は、糸魚沢地区を会場に、ミズナラなどの広葉樹を2,600本ほど植樹しました。またこの年は、植樹の取り組みが次世代に継承されていくことを願い、エゾヤマザクラの記念植樹も行われました。
ー町民の森植樹祭会場ー
「植樹によるCO2削減はもちろんのこと、こうして植えられたミズナラの木は、厚岸ウイスキーの熟成樽にも使われており、地域産業の振興にも結び付く重要な取り組みと位置づけています」
このほか、「環境振興」の観点からも、町の花に指定されているヒオウギアヤメの育成や保護活動にも寄付金を活用しています。
市街地から12kmほどの場所に広がる「原生花園あやめヶ原」は、6月中旬~7月上旬にかけて約30万株のヒオウギアヤメが一面に咲き誇り、町の観光名所のひとつとなっています。
「ヒオウギアヤメはほかの植物の影響を受けやすい花なんです。ヒオウギアヤメが毒を持っている性質を生かし、あえて馬を放牧して周りに生えている雑草だけを食べさせることで、ヒオウギアヤメに栄養がいきわたるような施策を行っています」
すべての寄付者に活動報告を書面で郵送
住みやすい町づくりを大きな目標として掲げ、保育費や学校給食の無償化、18歳までの医療費の無償化など、教育面や社会保障面の活動も充実させている厚岸町。
このように寄付金を充当した事業に関しては、毎年、すべての寄付者に対し書面での活動報告を行っています。
「厚岸町ではホームページへの掲載だけでなく、一人ひとりの寄付者の方に向けて、郵送による紙でのご報告にこだわっています。どのような事業に使ったのかという報告と、財政部局で基金として積み立てた分を今後どのような事業に使っていくのかという予定を、二段構えでお知らせしています」
町に暮らす人だけでなく、町を応援するすべての人にていねいに寄り添う姿勢が印象的な厚岸町。地域が持つ豊かな資源を守り、次世代につなげる取り組みを応援したいという方は、ぜひ、厚岸町への寄付にご協力をお願いします。
自治体情報
北海道の南東部に位置する厚岸町。町名の由来はアイヌ語「アツケウシイ」、または牡蠣の漁場を意味する「アツケシ」から転じた説などがあります。道東文化発祥の地としての長い歴史を持ち、道内有数の水揚げ量を誇る「牡蠣のまち」としても有名です。ほかにもウニやあさり、ホタテなど、海の名産品が多数。冷涼で湿潤な気候を生かし、厚岸蒸溜所で生み出されるジャパニーズウイスキーも高い人気を誇っています。
1993年には厚岸湖・別寒辺牛湿原がラムサール条約に登録、2021年3月には近隣のまちを含む「厚岸霧多布昆布森国定公園」に指定されました。
北海道厚岸町のふるさと納税
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