地域が誇る銘菓やブランド牛、旬の農産物や水産物、店舗や旅行で便利に使用できる優待券など、ふるさと納税には、バラエティに富んだ返礼品が揃っています。
ふるさと納税の楽しみは、返礼品を選び、受け取ることだけではありません。
縁(ゆかり)のある地方自治体や、お世話になった思い入れのある自治体などの寄付金の使いみちを選ぶことで、自身の寄付金が町や村に与える影響を知ることも一つの醍醐味となるでしょう。
ふるさと納税バイブルでは、返礼品が目的の寄付だけではない選択肢を知ってもらうために、全国の自治体に寄付金の使いみちを伺い、その想いを発信していきます。
今回紹介するのは、手延べそうめんや、日本酒などの返礼品で人気の奈良県桜井市です。
桜井市は奈良盆地の中央東南部に位置し、丘陵部は盆地部より気温がやや低く、降雨が多い気候です。
三輪山を御神体とする日本最古の神社「大神神社」や、桜やボタンなど四季を通じ「花の寺」として多くの信仰を集めている「長谷寺」など、多くの伝統的な寺社があることでも知られています。
日本のはじまりの地。纒向遺跡は貴重な観光文化財
令和4年度、桜井市の寄付金がもっとも多く充当されたのは考古学調査で、主に纒向遺跡(まきむくいせき)の研究や普及に活用されました。
「桜井市域の北部、JR巻向駅周辺に広がる纒向遺跡は、知る人ぞ知る古代遺跡です。飛鳥時代以前の日本古代史において、ヤマト王権のはじまりはこの纒向遺跡だといわれています。
桜井市は『日本のはじまりである遺跡がある地』として全国にPRしており、それがさまざまな観光業にも繋がっています。」(以下太字「」…桜井市自治体の方の言葉)
桜井市の貴重な観光文化財 纒向遺跡 航空写真
纒向遺跡の発掘調査は、1971年以降、桜井市教育委員会と県立橿原考古学研究所によって200次を超える調査が継続的に行われてきました。2013年には、その一部が国史跡に指定されました。
調査済み面積は南北約1.5キロメートル、東西約2キロメートルにもおよぶ広大な面積のうち2%ほどで、未解明の部分が多く残されています。
寄付金は、遺跡の発掘調査や研究活動、埋蔵文化財の調査や保存、活用などに充てられています。
元祖前方後円墳「箸墓古墳」は卑弥呼の墓だった?
纒向遺跡では、箸墓古墳(はしはかこふんを)代表として、纒向石塚古墳(まきむくいしづかこふん)や矢塚古墳(やづかこふん)、前方後方墳であるメクリ1号墳などの発生期古墳が、日本で最初に築かれたことでも知られています。
「なかでも箸墓古墳は、前方後円墳の元祖とも言われています。纒向遺跡の南側部分に位置する、扇状地上に形成された全長約280メートルの前方後円墳で、後円部径は155メートル、前方部長125メートルです。ちなみに桜井市のふるさと納税の愛称に『卑弥呼の里』という名前が付けられています。これは、箸墓古墳が、邪馬台国の卑弥呼の墓なのではないかと推測されている(※)からです。」
※近畿説と九州説があり、近畿説の場合の有力な候補地が箸墓古墳とされている
箸墓古墳を模した「箸墓リアル古墳クッション」は、ふるさと納税の返礼品にもなり、話題を呼びました。
箸墓リアル古墳クッション
ほかにも、桜井市のマスコットキャラクターは、卑弥呼を模した「ひみこちゃん」が採用されています。
ひみこちゃん
このように、纒向遺跡に関連するグッズやキャラクターが、桜井市のアピールにも活用されています。
遺跡調査では驚きの出土品が。卑弥呼の宮殿跡も
纒向遺跡の発掘調査では、日本最古の出土品や卑弥呼の宮殿跡地など、さまざまな発見がなされています。
「2007年、最古の木製仮面が出土されました。纒向遺跡第149次調査において、朱塗りの盾たてや鎌柄などの多数の遺物とともに庄内1式期(3世紀前半)の土坑から出土したものです。木製の仮面としては国内最古のもので、当時話題になりました。」
纒向遺跡出土の最古の木製仮面
「2009年に、纒向遺跡の中心となるような大規模建物跡が見つかっています。これが、卑弥呼が政治を行う邪馬台国の中心地だったのではといわれています。」
卑弥呼の居館だった可能性のある大型建物跡
「当初は簡単な説明板しかありませんでしたが、現在は高さ約1メートルの木製柱を立て、遺構が分かりやすいように整備されています。」
纒向遺跡辻地区 木柱 北西より
出土品の保全や、卑弥呼の宮殿跡に柱を立てて復元するプロジェクトにも、多くの寄付金が活用されました。
ロマンあふれる纒向遺跡。寄付で発掘支援を
桜井市の財産である纒向遺跡が、まちをPRする観光文化財として活用されていることが分かりました。
現在調査面積は2%ほどと、まだまだ謎が多い纒向遺跡。今後更なる発見や、誰も知らない新たな歴史の紐解きが期待されます。
発掘を進めるためには、費用や人手も確保しなければいけません。纒向遺跡の謎を一緒に解き明かしたいという方は、ぜひ桜井市を支援してみましょう。
また、纒向遺跡の研究は、主に纒向学研究センターで行われています。一般向けには、埋蔵文化財センターで遺跡に関する展示を見ることができます。ほかにも、年に一度、東京フォーラムで、纒向遺跡に関わるイベントやシンポジウムも行われています。
考古学好きの方や、纒向遺跡についてもっと知りたいという人は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
自治体情報
奈良盆地の中央東南部に位置し、丘陵部は盆地部より気温がやや低く、降雨はやや多い。全体的には夏は暑く、冬の寒さは厳しい。盆地から山麓、さらに丘陵への移動型気候となっている。地域によって感じる気候が変わるのが特徴。
三輪山を御神体とする日本最古の神社「大神神社」や、桜やボタンなど四季を通じ「花の寺」として多くの信仰を集めている「長谷寺」、秋の紅葉や「けまり祭」で有名な「多武峰談山神社」など、多くの伝統的な寺社がある。
奈良県桜井市のふるさと納税
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